「A Little Night Music」 をみる(ストラトフォード カナダ)

  ストラトフォードは、トロントのUNION駅からVIA鉄道で2時間ほどで行ける人口3万人の小さな町。ただし午前と夕方の一日二便しかなく、乗る前に荷物検査をする場合もあるらしく30分前に来るよういわれる(検査されなかったけど)。

 今回のめあては、ここで行われているストラトフォード演劇祭(Stratford Festival)。といっても、世界中から有名な劇団が来てという類のお祭りではなく、小さな町に似合わず幾つもある劇場に、10くらいの演目が交替でかかるというもの。シェイクスピア生誕の地である英のストラトフォード・エイボンと同地名ということからか、シェイクスピアにまつわる演劇祭を1953年に始め、衰えていくばかりだった町を盛り返したらしい(ガイドブック参照)。実際、歩いて劇場に行けるホテルやB&Bの8月週末は予約でいっぱいの様子。シェイクスピアばかりではなく、ミュージカルや現代劇もやっている。

 というわけで、初日夜は「A Little Night Music」を鑑賞。ソンドハイムによるコメディタッチのロマンスもので、ブロードウェイオリジナルキャストのCDは聞いていたけれど、実際にみるのは初めて。オペラ風に歌える役者の数が結構必要な芝居なので、今の日本のミュージカル界隈では難しいかなぁと思いながらみる。前半最後の「A Weekend in the Country」は圧巻。何重唱にもなっていく(音楽に疎いのでわからない)過程がたまらない。CDで聞いている時にもお気に入りではあったのだが、生で聞くと声に身体性が加わるのか、迫力がすごい。いいもの聞かせていただきました。

 後半の「Send in the clowns」はとても有名な曲なので楽しみにしていたのだが、他のオペラ風の曲の数々で歌い手の声を堪能したあとに聞くと、あれ?と思ってしまった。デジレ役の役者さんの声も歌い方も好きだったのだけど、そもそもこの曲、歌唱力を見せつけるところがないことに気付いたというか。悲しい場面だから声張り上げて歌わなくていいといえばそうなんだけど、このミュージカル自体が役者の歌声を楽しむつくりになっているので、つい期待してしまったかも。しかも一番の見どころだ、と意気込んでみてしまったから余計に。もちろん、ポピュラーなメロディでいい曲なのだけど、芝居の中で聴くよりも単独で聴く方が好きかも。

 ストーリー的には、そりゃないわなという大団円だけど、音楽を堪能するという面では、とてもとてもいいミュージカル。映画版だけじゃなくて、どこかの舞台版DVDが出ないかなぁ。